青梅市加治丘陵における
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加治丘陵（霞丘陵ともいう；図1.）
- 地 番：青梅市黒沢,小曾木,木野下,谷野,塩船,吹上,東青梅,勝沼,根ヶ布
- 標 高：150〜300m 調査対象：小曾木街道、霞川、永山丘陵、岩蔵街道に囲まれた区域
- 水 系：入間川経由荒川水系の3河川−黒沢川,小布市(こぶいち)川,霞川
- 植 生：尾根部−落葉広葉樹の二次林,スギ･ヒノキ針葉樹植林,アカマツ林,ゴルフ場,宗教法人施設 谷部−水田,畑地,集落,放棄水田跡地草本植物群落(ヨシ・ツルヨシなど)
既往の調査
- 金井郁夫氏の調査(金井,1979など)
- 第2回自然環境保全基礎調査(環境庁,1978 ＊金井氏による調査)
- 1998年都内トウキョウサンショウウオ一斉調査
図1. 調査地
確認地点について
- 1998年の調査時に確認された産卵地のほとんどで卵嚢が確認された。
- 新たに確認された産卵地もあり、分布域はより広い範囲にわたると考えられる。
確認卵嚢数について
- 549個の卵嚢が確認された。そのうち、黒沢川水系で392卵嚢(71.4%)、小布市川水系で142卵嚢(25.9%)、霞川水系15卵嚢(2.7%)確認された(表1.)。
- 1998年の調査では今回の調査対象地域に該当する範囲では222卵嚢(加治丘陵個体群228卵嚢から笹仁田峠以東の6卵嚢を除いた数値)で、確認卵嚢数は大幅に増加した。
表1. 確認卵嚢数
水 系 2006年卵嚢数 1998年卵嚢数* 数 割合 @黒沢川水系 392 71.4% (加治丘陵個体群の卵嚢数228から笹仁田峠以東の卵嚢数6を除いた数値) A小布市川水系 142 25.9% B霞川水系 15 2.7% 合計数 549 100.0% 222 *久保田,1999から引用.
水系毎の確認状況
黒沢川水系
丘陵部には谷戸地形があり水路や湿地が多く、卵嚢は広範囲で数多く確認された。
上流側の分布境界は黒沢1丁目の天寧寺坂通より以東であったが、これより西には採石場跡地があり、かつて谷戸地形があった時代にはサンショウウオが生息していた可能性がある。
2005年、2006年連続で哺乳類によると考えられる咬殺死体を確認している(下写真)。小布市川水系
丘陵部の3つの谷戸で広範囲に確認されたが、水系全体では黒沢川水系より確認数は少なかった。
谷戸の湿地は埋め立てられ果樹園や畑地や資材置き場として利用されていたり、徐々に乾燥化して草地や樹林に遷移したりして、かつてより生息適地が減少していると考えられる。- 霞川水系
卵嚢は3つの水系で最も少なく、谷の1ヶ所のみ。
卵嚢が確認されたのは丘陵の谷沿いの水路であったが、同様の環境を持つ周辺の谷では確認されなかった。また、水系の源流部(根ヶ布地区･勝沼地区)は谷戸地形を呈しているが、卵嚢は発見できなかった。
この水系では1998年調査では卵嚢が確認されなかったが、今回の調査では新たに産卵場所が1ヶ所確認された。
他の2つの水系に比較して分布域が狭いが、小規模な個体群が維持されていると考えられる。また、過去に金井氏(1979)の調査では最上流部の根ヶ布1丁目での記録があることから、分布域が狭まっていると考えられる。
現在の課題
- 卵嚢が数個しか確認できなかった谷戸もみられ、谷戸単位の個体群の消失が進行しているものと推測される。
- 湿地の乾燥化による産卵地の消失
- アライグマProcyon lotorの捕食の危険性
当グループでは青梅市内の多摩川以北地域の生息状況を把握するため、今春に分布調査を予定している。
今回の調査範囲でのトウキョウサンショウウオの生息状況について、西多摩自然フォーラムの久保田繁男氏には多くの情報を提供して頂いた。ここに謝意を表したい。
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